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安倍総理がもくろむ「放送改革」

安倍総理は、「放送の改革」について積極的に語るようになった。IT(情報技術)企業などでつくる経済団体「新経済連盟」の新年会で、ネットテレビについて「放送法の規制がかからないが、見ている人には地上波などと全く同じだ。日本の法体系が追いついていない。大きな改革をしなければならない」と述べ(1月31日)、未来投資会議でも「放送事業の在り方の大胆な見直しも必要」と述べている(2月1日)。
具体的に安倍総理はどのような改革を考えているのか、予算委員会で質問した(2月6日)。少し長くなるが答えをそのまま引用しよう。「私は以前、AbemaTVに出演いたしましたが、こうしたネットテレビは、視聴者の目線に立てば、〜地上波と全く変わらないわけであります。」「このように、技術革新によって通信と放送の垣根がなくなる中、国民共有財産である電波を有効活用するため、放送事業のあり方の大胆な見直しが必要だと考えています。放送については、昨年の規制改革推進会議の答申や新しい経済政策パッケージにおいて、放送事業の未来像を見据えて、放送用に割り当てられている周波数の有効活用などにつき検討を行うこととしておりまして〜今年の夏までに結論を出すこととしております。」「〜インターネットについて新たな規制を導入することは全く考えていない」要約すれば、①ネットTVも地上波TVも同じだから、②放送事業の未来を見据え、③放送用周波数の有効活用などを検討する。④ネットには新たな規制は課さない、となる。素直に読めば、「規制のないネットの世界に地上波放送を移行させ、空いた周波数を他の事業に有効利用する」となる。
答弁でも触れているが、昨年10月8日、総選挙の公示の前々日、安倍総理はAbemaTVに3時間にわたって出演した。選挙直前のこの時期、自民党総裁の総理の発言のみを一方的に取り上げるような番組は、地上波では、放送できない。放送番組の編集に「政治的公平」を求めている放送法第4条に反し、放送免許の停止命令を受ける場合もあり得るからである。(実はこうした厳しい運用にしたのは、キャスター更迭を狙った安倍政権自身である。)ネットTVで、キャスターの厳しいツッコミもなく、長時間自由に話ができたことがよほど嬉しかったのか、安倍総理は、これ以後、放送改革を訴えはじめた。
そこで「政治的公平性」がネットTV及び地上波TVの双方で不要と考えるのか、総理に質問した。総理は、米国が政治的公平性を定めたフェアネスドクトリンをやめた例をあげつつも、「予断を与えることを言うのは差し控えさせて頂き」「専門的な見地から規制改革推進会議においてしっかりと議論をしてもらいたい」と答弁した。一方、ネットに更に規制をかけることは「全くない」と繰り返している。質問でも指摘したのだが、通信と放送が融合し視聴者から見て地上波TVもネットTVも区別がつかない以上、規制はそろえるべきである。総理の答弁のように、ネットにさらなる規制をかけないというなら、地上波TVも自由にするという結論になるはずだ。
そこを答えず、ネットに規制をかけないと繰り返す安倍総理。それはつまり、上でのべたように、「規制のないネットの世界に地上波放送を移行させ、空いた周波数をモバイルなどに有効利用する」ことを考えているからではないか。
ひとつの考え方ではある。しかし、政府からの介入から番組編集の自由を如何に守るか、など慎重な検討が必要だ。夏までに結論を出せるとは思えない。
しかし、安倍総理にとっては、それでもよいのではないか。放送用周波数へのオークションの導入について質問したところ、否定しなかった。オークションの導入やネットへの移行により周波数取り上げをちらつかせ、地上波TVを牽制する。それで十分だからだ。引続きこの問題を国会で取り上げる。