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憲法を改正して、非常時の国会議員の任期延長を認めるべきか?

憲法審査会で「緊急事態における国会議員の任期延長」のための憲法改正が必要かどうか、議論を行っています。日本国憲法は、国会議員の任期を、衆議院4年(解散の場合はその時点まで)(憲法45条)、参議院6年(同46条)と定めていますが、任期満了や解散後、大災害などで選挙ができなくなった場合、どのようにするかは定めていません。
私は、審査会の場でも述べましたが、特例的な「任期延長」には賛成です。参議院の緊急集会(54③)の規定を使えば問題ないとの意見もありますが、この規定は衆議院の長期間の不在を想定してのものではありません。災害の復旧復興事業を、地元の議員不在のまま進めれば、地域の意向が十分に反映されなくなります。選挙ができるようになるまでの間特例的な任期延長を認めるべきです。
ただし、特例的任期延長を「国家緊急権」※の問題として捉え、政府に権限を集中するような緊急事態条項の一部として、憲法に規定することには反対です。緊急事態条項とは切り離すべきです。

自民党「憲法改正草案」の緊急事態条項は、政府が、自ら緊急事態を認定すれば、法律によらず政令(緊急政令)で国民の権利を制限し義務を課すことができ、国会の議決なく予算を使えるように規定されています。また、緊急事態の範囲も「我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める」とあり、非常に広いものです。ワイマール共和国時代、緊急事態に「財政難」などあらゆることを含ませ緊急事態として乱発した結果、ナチス独裁につながったと言われていることからも、こうした独裁的な権限を政府に付与すべきではありません。

「〜特殊の必要が起こりますれば、臨時議会を招集して之に応ずる処置をする、又衆議院が解散後であって処置の出来ない時は、参議院の緊急集会を促して暫定の処置をする、同時に他の一面に於いて、実際の特殊な場合に応ずる具体的な必要な規定は、平素からの濫用の虞なき姿に於いて準備するやうに規定を完備して置くことが適当であらうと思うわけであります。」これは憲法制定時の金森国務大臣の答弁ですが、あくまで議会を機能させ、議会の統制の下、非常時においても国政を機能させるべきです。国会議員の任期の延長は、この原則によりつつ、大災害などで長期間選挙が出来ない場合、その地域の代表が不在となることを避けるため、特例的な規定を設けてはどうか、ということです。

任期の特例的な延長については、検討すべき多くの課題があります。
衆議院の解散後、特例的任期延長を認めた場合、選挙を経ないで議席を復活させることになります。これは、国民主権の観点からみて望ましくありません。衆議院は任期満了を原則とし、内閣不信任等の場合以外の解散を制限すべきということになります。
また、参考人質疑で木村草太先生が述べておられたように、誰が判断するかという問題もあります。内閣では濫用の虞があり、国会ではお手盛りになります。裁判所の関与が不可欠と述べておられます。相当慎重な制度設計が必要であることは間違いありません。

※ 国家緊急権「戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など、平時の統治機構をもってしては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、国家権力が、立憲的な憲法秩序(人権の保障と権力分立)を一時停止して非常措置をとる権限」