首相官邸が日本学術会議の会員任命拒否問題で、会員候補6人が安全保障政策などを巡る政府方針への反対運動を先導する事態を懸念し、任命を見送る判断をしていたことが7日、分かった。安全保障関連法や特定秘密保護法に対する過去の言動を問題視した可能性がある。複数の政府関係者が明らかにした。(共同通信11月8日)
1 内閣法制局は違法と答弁
11月2日の予算委員会で私は、内閣法制局に対して「(日本学術会議法上)政府の政策を批判する、安保法制や共謀罪に反対したという恣意的な理由で日本学術会議会員を任命拒否できるのか」と質問した。これに対し近藤内閣法制局長官は「拒否をしていくというときには、消極的に拒否をしていくということだと思いますので、恣意的に政府が、自由な裁量権を発揮したような形でのものは認められない」と答弁している。翌日にもこれを補足する形で「奥野委員のご質問に答えて恣意的という言葉を使いましたけれども、〜そこでご指摘を受けております、主観的に政府当局の気に食わないということで任命しないのは違法であるという〜趣旨のことを申し上げた」と答弁した。
私の質問の中でも触れたがこの答弁のもととなった法制局の見解をまとめた決済文書(昭和37年8月)にはさらに「申出のあった者がその時における政府の政策を支持しないという理由によって、任命権者がその申出を拒否することは許されないものと解すべきであ」るとされている。
つまり、主観的に政府当局の気に食わない(政府の政策を支持しない)という理由で任命拒否をすることは違法ということを、内閣法制局ははっきりと認めたのだ。
2 違法と認めなかった菅総理
この記事のとおり「安全保障政策などを巡る政府方針への反対運動を先導する事態」への懸念が任命拒否の理由であるとすれば、法制局見解ではっきり違法になる。
同様の質問を菅総理にしたところ、正面からは答えず、「違法」とはついに認めなかった。さすがに自分のしたことを「違法」とは言えなかったのだろう。
3 法治国家の危機
報道が事実であれば、内閣総理大臣が、法律に従わず、勝手な解釈で任命拒否をするというあり得ない事態が起きていることになる。国会の作った法律に行政府が従う「法律による行政」は三権分立の基本だ。それを理解していないようではトランプと変わらない。
菅総理は直ちに6名の任命拒否を撤回すべきだ。