1 憲法改正と教育の無償化
教育の無償化に関し、自民党が憲法改正案をまとめた。報道によれば、自民党案は無償化を明記せず、教育の機会均等を定めた26条1項に「経済的理由によつて教育上差別されない」との1文を追加、3項を設け「国は、教育環境の整備に努めなければならない」と規定するようだ。これに対し、維新は教育の無償化を明記するよう反発している。
私は、教育無償化には賛成だ。問題は、財源だ。財源が確保できなければ、憲法に規定してもたちまち違反となってしまう。「無償化」を憲法に明記すべきかどうか慎重な検討を要する。
2 総選挙のための急ごしらえで詰まっていない財源
幼児教育無償化について、今週、衆議院総務委員会で質問をした(2月22日)。内閣府は、幼児教育・保育の無償化と高等教育の無償化におよそ1.5兆円程度かかり、財源は、来年10月の消費税引上げ(8%→10%)による増収5.6兆円から捻出されると答弁した。
内閣府は、1.5兆円の内訳については「現在検討中」を繰り返す。無認可保育や預かり保育、私立幼稚園を利用する場合、どこまで無償化するかが決まっていないためだ。この数字は、昨年9月安倍総理が衆議院解散を表明する会見の際「人づくり革命を力強く進めていくためには、その安定財源として、再来年10月に予定される消費税率10%への引上げによる財源を活用しなければならないと、私は判断いたしました。」「2兆円規模の新たな政策を実施することで、この大改革を成し遂げてまいります。」という発言が根拠になっている「腰だめの数字」。きちんと検討されたものではない。今後数字が膨らむ恐れもある。
3 遠のく財政再建
消費税2%引上げ分は、社会保障充実に1.1兆円を充て、残る4.5兆円を財政再建に充てるはずだった。ところが、安倍総理が、選挙の際、教育無償化等人づくり革命に2兆円を充てることを表明。2020年PB黒字化の財政再建目標は、今国会で断念された。幼児教育・保育の無償化のコストを地方に負担させる(およそ4000億円と推定される)ことも、私の質問の中で明らかになったが、この点も、さらなる地方財政の悪化を招き問題だ。
4 憲法に財政健全化条項を設けるべき
こうした状況を見れば、教育の無償化が国の財政を考えず、単なる選挙対策として決められたのではないか、と思わざるをえない。
ポピュリズムによるこれ以上の財政悪化を止めるため、憲法に、「国と地方の中長期の財政均衡義務」を規定すべきだ。EU諸国では、憲法に、細かい数値基準まで記載した財政均衡条項が設けられている。我が党でも教育の無償化条項とセットで議論を進めている。憲法改正は、ポピュリズムに利用してはならず、より良い「国のかたち」を求めて行うべきものではないか。