憲法記念日の各紙世論調査を見ると、国民の多くは憲法改正に反対ではないようだ。私も、日本国憲法が「不磨の大典」とは思っていない。制定時と環境が変わり、明らかな不都合や絶対的な改正の必要が出てきているのであれば、改正をすべきだという立場だ。
個人的には、参議院の定数を増やさず合区を解消するため、参議院のあり方を見直す必要があるのではないか(安倍案では定数を増やさなければ違憲となる恐れがある)、地方自治のあり方や憲法裁判所について検討すべきではないか、というあたりがそうした論点にあたると考えている。
一方、緊急事態条項については、現行法で十分対応できる。コロナ対応が上手くいかないのは憲法が悪いからではない。政権の対応が不味いだけだ。コロナ禍での国会のオンライン審議も、憲法第56条の「出席」を解釈によりオンラインで認めれば、すぐにも実現できる。憲法改正に結びつけることがかえって実現を妨げている。
9条はどうか。現行の条文で自衛隊の活動に不都合が生じているだろうか。北朝鮮への対処や台湾有事の際に対応ができないということであれば、まず、安全保障上の議論をし、憲法のどこが問題なのかを示すべきだろう。それがないまま、国民を分断するような議論をすべきではない。安倍案が否決されれば、自衛隊そのものが違憲とみなされる恐れがある。
今、急いで憲法改正を進める必要はない。安倍4項目ありきではなく、本当に改正が必要な部分があるかどうか、じっくり議論をすべきだ。
最後に国民投票法の改正にも触れておきたい。私は、現行法は、社会のグローバル化・ネット化を想定しておらず、外国政府などが介入する恐れがある、国民投票法の抜本改正が必要と憲法審査会で主張してきた。
現在、政府案(7項目改正案)に、「その施行から3年を目途に、(憲法改正の結果を左右しないよう)投票の公正を確保するための措置として
- TV CMやインターネット広告の制限のあり方
- (外国人の寄付の禁止など)運動資金の透明化等
について国民投票法の改正など必要な措置を講じる」との修正案を与党に提示している。
投票結果の公正さが確保されていることは、憲法改正の当然の前提だ。もし、与党が憲法改正を真剣に考えているのであれば、修正に応じ「国民投票法」の抜本改正を優先すべきだろう。