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党利党略ではなく抜本的な参議院改革を求める

国会終盤になって、自民党が参議院選挙制度改革案を出してきた。参院定数を比例代表で4増、埼玉選挙区で2増の計6増とする内容だ。(3年ごとの改選数は比例で2、埼玉で1増)。さらに現行制度は政党が比例名簿上の候補者に順位をつけない「非拘束名簿式」だが、上位2枠に限って「拘束名簿式」を導入する。
2016年の参議院選挙は、「鳥取、島根」と「徳島、高知」が合区された結果、「1票の格差」は13年の最大4・77倍から3・08倍まで是正された。最高裁は参議院について「立法を始めとする多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えつつ、参議院議員の任期をより長期とすること等によって、多角的かつ長期的な視点からの民意を反映させ、衆議院との権限の抑制、均衡を図り、国政の運営の安定性、継続性を確保しようとしたものと解される。」「さきに述べたような憲法の趣旨、参議院の役割等に照らすと、(中略)参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難い。」(最高裁判所平成26年11月26日大法廷判決)と判断している。それでもなお、3倍を超えていた16年参院選を最高裁が合憲と判断したのは、19年参院選までに「選挙制度の抜本的な見直し」を検討し「必ず結論を得る」と公職選挙法の付則に定めた立法府の姿勢を評価したからだ。
この自民党案が「抜本的な見直し」といえるだろうか。「拘束名簿式」の導入は、来夏の参院選で改選を迎える合区された「鳥取・島根」「徳島・高知」自民党現職4人の救済策だ。立候補できなくなる2人を比例代表で当選させるため、比例の定数を増やし、名簿の上位に優先枠を設けるのが狙いだろう。9月の総裁選選挙で参議院票を当て込んだ安倍総理の露骨な私利私略だ。それ以前に、人口減少の時代に定数を増やすことが「民意」の理解を得られだろうか。
我が党は、玉木代表が述べたように少なくとも「格差是正と定数を増やさないことを同時に達成できる」ようにすべきという考え方から、地方区2増分を比例区で削減する対案を検討している。来年の参議院選挙まで時間が限られているため、当面この案しかないが、合区が存続するため「抜本的」な見直しとは言えないだろう。
私は、東京一極集中が進む中で、地方の声を国政に反映させ地方生活者の権利を守るため、合区を解消し、最低限各都道府県から選挙ごとに代表を出せるように見直すべきと考える。しかしながら、参議院の定数を増やさず、一票の格差を平等にしながら、合区を解消することは、現在の憲法の下では不可能だ。上記の最高裁判例があるように、現行憲法は、参議院に衆議院と同等の一票の価値を求めているためだ。
とすれば、参議院のあり方を、「地方代表」あるいは、「地方及び職能代表」として位置づけ、投票価値の平等の要請の論拠とされる参議院の強い権限を見直すことで、合区の解消を図ってはどうか。例えば首長や地方議員の兼務を認めて「地方代表」としての性格を明確にし、地方制度に関する予算・法案に限り衆議院との権限を対等とするなど、参議院の性格・位置づけを明確にするための憲法改正案の検討を行ってはどうか。参議院の性格も明確となり「衆議院のカーボンコピーという批判」の解消にもつながる。今、日本に必要なことは、抜本的な「改革」※だ。

※このブログでも述べてきたが、国民投票で否決(2016年12月)されてしまったが、イタリアの憲法改正案における上院改革案が参考になる。
イタリアの上院は、日本の参議院と同様、下院(日本の衆議院)と対等なのだが、これを(1)上院議員数を現在の315議席から100議席に削減、(2)上院を地域代表の議院とし、原則として州議会の間接選挙で選出(州議会議員から74名、市長から21名)、(3)一定の法律(地方制度に関するもの等)を除き、原則として下院のみが立法。上院は修正案を作成することができるが下院は単純過半数で上院と異なる見解をとることができる、としていた。